Document YAKINIKU – アーティスト・アクション in 枝川

2010年暮れ、枝川の朝鮮学校で行われた『アートプロジェクト』。 クロージングイベント・旧校舎講堂のヤキニクの煙に塗れて消えた4日間の全記録

この本は、東京都江東区枝川にある東京朝鮮第二初級学校の今は亡き旧校舎で、2010年12/26~29にかけて行われたアートイベントと、最終日に開催された旧校舎お別れ大焼肉パーティーの記録を豊富な写真とテキストでまとめた、総数270ページ以上に及ぶ大ドキュメントです。

『枝川朝鮮学校』の名で知られる本校は、幻のオリンピックとなった1936年東京オリンピックをめぐる塩浜地域の都市整備により、ゴミ焼き場しかなかった湿地帯枝川へ強制移住させられた在日朝鮮人達によって建てられた学校であり、2003~2007年に東京都との間で行われた『枝川裁判』の舞台でもあります。

このアートイベントは、枝川裁判を通して広がった学校支援運動と、裁判の勝利的和解、そして老朽化が進んだ旧校舎から新校舎建設の決定を受け、この歴史ある旧校舎が取り壊されるのを目前に、日/韓/在日のアーティスト・写真家・映像作家・音楽家・社会学者・パフォーマー・詩人など多くの表現者、そして学校の子供たち・地元の方々・学校支援市民団体が協力しあい作りあげた旧校舎お別れアートイベントです。

準備期間の有り得ない短さ、予算も無し、プランもほぼ白紙からという状況で、賛同者同士の濃密なやりとりの中ばく進していったアートイベントは、さらに舞台が『朝鮮学校』ということで、アートにとっても、学校側にとっても、多くの挑戦を投げかける大変刺激的なイベントでした。

このアートイベントのもつ重大な意義を、是非記録として残そうという賛同者たちの意志によって、2年以上の紆余曲折を経て2013年3月に完成したのが、本書『Document YAKINIKU-アーティストアクションin枝川』です。

3/30の出版記念焼肉パーティー(於:枝川朝鮮学校)を皮切りに、より多くの方々にこの本を読んで頂きたいと思い紹介させて頂きます。

アートイベントから本書出版に至るその間に、3.11の東日本大震災・原発事故が起き、のっぴきらない状況が続いております。最近の安倍政権下で排外主義的傾向はますます強まって、周辺諸国との関係悪化も懸念されます。

本書は、稀に見るアートイベントの詳細な記録としての価値はもちろん、その内容は必然的に「歴史」「相互理解」「つながり」といったテーマを含んでいます。どうやってこれから互いに心を通わせながら生きていくか。知性とアートの融合、歴史とアートの調和・・・本書がその術を紐解くガイド役を少しでも果たせればと願っております。

文:任炅娥(artistaction賛同者/チェロ奏者)

書籍情報

『Document YAKINIKU – アーティスト・アクション in 枝川』
仕様:A4版、274ページ

ISBN978-4-9906776-1-9
定価:¥2,000
発行者:Artist Action

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推薦・紹介文

石川雷太(現代美術家)
-現在の日本に住む私たちの多くは、平和な日常の中で、「国境」も「民族」も「国家」も「差別」も「戦争」も他人事と思い込んではいないだろうか?しかしそれは間違いだ。今この瞬間も「見えない壁」が至る所にある。複数の「歴史」と複数の「物語」が私たちを分断している。私たちはいったいどの「物語」を信じればいいのだろうか?日本?北朝鮮?韓国?アメリカ?・・・どれも違う。私たちの<物語>は私たち自身の手でつくっていかなくてはならない。分断のない未来へ向けた私たちの<物語>をつくる、その<ヴィジョン>をみなに伝える、それこそが最高の<アート>だ!2010年末、東京の枝川朝鮮学校、取り壊し直前の旧校舎を全面解放して行われた奇跡のアートフェスティバル「YAKINIKU Artist Action in 枝川」、在日と日本人のアーティスト有志総勢50名による「見えない壁」を乗り越えるための<アート>の試み、この本はその記録です。ぜひ手にとってご覧下さい。

アライ=ヒロユキ(美術・文化社会批評、プロジェクト賛同者)
-多文化主義、コミュニティアート、アーティスト・イニシアティブ・・・。90年代以降、輸入された幾つかの海外動向も、日本の風土に根づいたとき、ともすればその「核心」は曖昧となる。逆に、トレンドへの配慮なしに、作家や賛同者たちがやりたいことをやった「YAKINIKU-アーティスト・アクションin枝川」は、凡百のアートプロジェクトにはない輝きを秘めている。その記録集がこの本だ。

本プロジェクトでは、東京都江東区の東京朝鮮第二初級学校、通称・枝川朝鮮学校の校舎建て替えを契機に、その校舎が刻んだ歴史性、地域性を触媒に2010年12月にアーティストたちがさまざまな表現を展開した。これは反権力のプロテストではない。しかし、日本社会の中で「不可視」の存在とされた在日コリアンを題材にすることは、政治性が不可避となる。参加作家のひとりは、その動機を(日本社会との)「見えない線」を確かめたかったからと語る。

ここにはキュレーターというコンセプトリーダーはおらず、作家たちは展示する意義、意味を自分で模索し、互いに議論し合い、作品に残した。展示記録だけでなく、実行メンバーの詳細な議論が収録されているのも見所だ。市場性や市民への配慮、業界習慣などの枠を取っ払ったところに生まれる表現。それはこの国で希有なアートの自生であり、それが朝鮮学校という場で可能であったことにいまの日本のアートの状況が端的に示されている。

武居利史(府中市美術館学芸員)
-アートの力とは何か?3・11以後、そうした議論が盛んだ。アートは、人々に精神的な癒しや励ましを与える一方で、現実の問題にどういう解決策を与えるのかといった疑問もよく出される。が、具体的な答えを出しえないからこそ、アートは社会的に機能するという逆説も存在する。個人の表現としてのアートは、組織や制度の枠組みをはみ出し、人々を結びつける触媒のような役割を果たすことがあるからだ。アートによるコミュニケーションの力である。

この記録集は、イベントのデータや参加者のコメントはもちろん、企画、準備、実施、反省に至る、すべてのプロセスをオープンに収録している。スタッフには、民族学校の関係者もいれば、これまでまったくかかわりのなかった人もいる。多様な立場の人々が、メーリングリストなども使い、討論をかさね、相互に認識を深め、イベントを実現していった様子は、読むだけでも感動的なものがある。

日本社会に存在している朝鮮学校という場所には、どちらが内で外かをあえて語らぬまでも、そこにはお互いに「見えない線」があったのかもしれない。だが、このプロジェクトは、その境界をアートによって超えていくことできた稀有な試みだった。行政が関与する大型のアート・プロジェクトも珍しくない時代にあって、ささやかだけれどもアートというものの本領が発揮されたイベントのように感じている。